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飴泥棒はニヤニヤと薄ら笑いを浮かべて、騒ぎ立てている子供をまるで無視し、夢中で飴を舐めている。
その表情は決して公けでは見せられない、なんとも教育上よろしくないものだった。
子供の母親が警備員を大声で呼んだが、男は意に介さない様子で、飴を舐め続けていた。
周囲の野次馬も、この男が何か普通ではない状態であることを見て取り、遠巻きに見ている。
「お母さん、あのおじちゃんお腹すいてたのかな?」
「そういう問題じゃないわね、あれは」
「じゃぁ、どういう問題なの?」
「問題があるってことが見え見えなのが問題ね。さぁ、警備員がきたから、後は任せましょう。こっちでーす! 飴はもういいので、この人がこれ以上問題を起こさないように、何とかしてくださいな。じゃあさよなら。ええ、もちろん訴えたりはしませんわ」
警備員が男に近づいても、男は特にあせる様子もなく、小さくなってきた飴をいとおしむように舐め続けていた。
そして男は、さして抵抗もせずに警備員に連れていかれた。
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