死せる義人ロト

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「やばっ!」「まじかよっ!」  突然ミカエルとラファエルが口を揃えて叫んだ。  エンデが同時に二人を見ると、そこには教会のステンドグラスにあるような、神々しい二人の天使がいた。  二人の天使は、遥か虚空を睨みつけながら、何かを感じ取ろうとするかのように、翼をざわめかせた。  すると二人の翼の羽根という羽根が逆立ち、ミカエルにいたっては、その羽根の1枚1枚についた眼までも激しく瞬いた。 「一人死んだぞ。あっ! もう一人死んだ!」 「あいつ『ラジエル書』を暗記してやがる! ミカエル! 私は一足先に行く。預言者をロトに近づける時には気を付けろ」  そう叫んだ瞬間、ラファエルの体は自身の翼に包まれ、小さく縮んだかと思うと、突然はじけるように消えてしまった。  後には白く柔らかな羽毛が一枚、ひらひらと舞い落ちてきたが、地面に落ちる前に、まるで空気に溶けたかのように消えてしまった。
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