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エンデは幼子の寝顔を見ながら、自らの人生を顧みた。
愛娘に何一つ自慢できる事等ない人生だ。
「なあ、俺は何でエヴァと結婚したんだろう?」
唐突にエンデは誰とはなしに話しかけた。
「君が一番良く知っているんじゃないかい?」
ミカエルのこのうえなく優しい声がエンデの頭に響く。
確かにエンデはそれを知っていたが、「自分は結婚なんてモノに縛られるような男だったか?」という想いが心に残る。
「なあ、俺が結婚したのはテミスがいたからなんだが、後になってみりゃエヴァも好きなんだって思うわけさ。でもな、俺はこんな男だったかな?」
エンデは自分の問いが、何の脈絡もないであろう事を意識していた。
だが、小さな寝息を肌で感じていると、何故かそのような疑問が湧き起こる。
「君はどうしたいんだい?」
今度は口に出して、ミカエルが聞いた。
はっと気付いたようにエンデは顔を上げて、ミカエルの深く優しい瞳を見つめ返した。
「俺は・・・・、エヴァと一緒に、テミスを幸せにしてやりたい。こいつは『あの女』が、自分の命と交換にこの世によこしてくれた、たった一人の俺の娘だ」
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