本編

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 俺達が住んでいる所は学校の裏側にある住宅地で、すぐ近くが学区と学区の境のため、そこに住んでいる森川南中学校の生徒は俺と小梅以外にはいなかった。  部活をやっていた頃は、毎日夜まで練習で学校にいたので、部活に入っていない小梅とは帰宅時間が全然違った。  だから俺は小梅のことなど微塵も考えずに、一人黙々と帰路についていた。  しかし三年生になり、部活を引退すると、帰宅時間に大差がなくなり、度々校門付近で見かけることが多くなった。  家が隣同士なので、もちろん通る道は一緒。  離れて歩いてはいるが、お互いの存在を認識したまま無言で歩くのは、なんとも気まずいものだった。  たいしたことないはずの家までの道のりが、ことの他長く感じる。  小梅が前を歩いていて、先に家に着いたとしても、家には入らず庭の花とかに水をやっている時があって――空気読めよ――俺が家に着いた時に鉢合わせになって目があったりなんかした日はばつが悪く、お互い急いで目を逸らしたものだ。  かと言って「お前もうちょっと長く学校に残ってろ」とか言う権利があるわけでもないし、俺はそこまでジャイアンじゃない。  でも自分があいつと気まずくならないために、学校に残ってるのもなんだかしゃくだ。  俺はなかば意地のように、この奇妙な小梅との下校を続けた。  そんなある日、俺は迂闊なことに鞄のチャックを閉め忘れていたらしく、下校途中、ふとした拍子に鞄の中を全部、アスファルトにぶちまけてしまったのだ。
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