始まりは突然に

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「おかえりお兄ちゃん!…今日はなんだか疲れてるね?なにかあったの?」 これが智が家に帰るや抱きついてきての咲の第一声である。 これまた誰しも認める可愛らしさを持っていて年は2つ下の中学二年生なのだが一向に兄離れをする気配はない。栗毛でショートカットの髪型に思わず守ってしまいたくなるようなくりっとした瞳に成長の期待できない背と…胸。そして超ブラコン…それが天野咲である。 「ああ、不毛な喧嘩に巻き込まれてな……」 根本的な原因が自分にあるだなんて欠片も思ってないようである。 「またあの二人なの?…懲りない人達だね」 後半はトーンを落としての台詞である。だが智は気づく由もなくこう言った。 「あいつらもあれでいいところはあるんだよ…きっと」 「そっかぁ……(すぐそうやって女狐の肩を持つんだね、お兄ちゃん)」 ちなみにこの妹、本音を口パクする癖がある。最も、兄は一度も気付いた事は無いが。 「友達も良いけど妹が待ってるんだからたまには早く帰ってきてね、お兄ちゃん」 「分かったよ、可愛い妹を待たせるわけにはいかないからな」 「ふふっ、ありがとう!今日はお兄ちゃんの好きなチャーハンだよ!」 大皿にたっぷり盛ってある晩御飯。気の利くあたりは流石と言うべきか、こんな兄を持ったための必然と言うべきか。 智は早速チャーハンに手を付けていく。すぐに食べ終わるとなんでもない事のようにこう言った。
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