第六幕

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急いで部屋に戻り、着物を脱ぎ新しい着物を着ようとしていると 突然、土方さんの部屋に繋がっている襖が開いた 急いで着物に袖を通した 土方さんの視線が脱いだ着物に付いている血を見ている 土方「華恋、こっちを向け」 華恋「少しだけ待ってください。まだ着替えてないので」 そんな事を言っても彼には通じないと解っていたが 足早に彼が近づいてきて勢いよく振り向かされる 土方「その傷、誰にやられた」 華恋「これは、木枝に引っ掛けただけです」 土方「嘘をつくな。俺が刀傷を見分けられないとでも」 そのまま、腕を引かれ彼の部屋へと連れていかれる 彼は、薬箱から塗り薬と包帯を取り出し手当しながらもその視線は厳しい 私は先ほどの出来事を彼に話した。 舌打ちをしながらも手当てしてくれる手は優しい 華恋「ありがとうございます。」 土方「傷は浅いから残らんとは思うが」 華恋「大丈夫です」 土方「大丈夫じゃねえ、次、もしあいつ等に何か頼まれたら隊士達を使え」 華恋「歳さん、これも仕事なので、それに他の方が行けばこの傷じゃすまないかもしれない」 確かに華恋の言った通りだ。 あいつ等は気が短い 気に食わねえことがあったら斬り捨てる奴らだ 特に、新見は俺達、近藤派の俺等を目の敵にしてやがる 華恋が来てからは減ったがその前は何人かの隊士が実際斬られている 芹沢は華恋には優しくしているようだが、新見や他の奴らは違う 土方「解った。だが、無理は絶対にするなよ。次このような事があれば許さねえ、叩き斬ってやる」 彼の胸にそっと寄り添う 土方「どうした、痛むのか」 華恋「いえ、貴方のそのお言葉だけで十分です。」 先ほどの町での事が思い出される ぎゅっ 土方「華恋」 彼はそれ以上は何も言わず抱き締めてくれた それから、夕餉の準備に戻り、いつものように隊士達が食事をしている間に稽古に向かった。 首に巻いている包帯から血が滲み出て斎藤さんや総司さんに心配されたが何とかごまかした。
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