第二幕

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あの日以来、土方さんは時々斎藤さんを訪ねて来た。 叔父様の話では京都を預かっている松平容保様の命で京都を守る役に斎藤さんが誘われているとの事だ。 斎藤さんはその話を快諾しその打合せの為に土方さんが来ているのだろうと言っていた。 今日も土方さんは斎藤さんを訪ねて何やら話しているようだ。 私はいつものようにお茶と沢庵を客間に運んでいく。 本当なら、茶菓子を出すのだが、斎藤さんも土方さんも甘いものが苦手らしく何度か茶菓子を出したが手付かずだったので聞いてみた 華恋「あの、土方さんは菓子は嫌いなのですか」 土方「ああ、俺は甘いものは好まない。お茶には沢庵が一番合う」 華恋「そうですか、わかりました。次は沢庵を茶菓子変わりにお出ししますね」 土方「あ、いや、そういうつもりで言った訳ではない」 華恋「別に気にしないで下さい。私が浸けた沢庵ですから美味しいかわかりませんけど…」 土方「あんた、沢庵浸けれるのか」 土方さんは不思議そうな顔で聞いてきた 華恋「はい、此処には沢山のお弟子さんが居ますから買うよりは浸けた方が安くつくでしょう」 土方「なるほど、じゃあ、今度、是非食べてみたい」 そう笑いながら言う土方さんの顔に何故か私の心臓が小さく音をたてた。 その音が何を意味しているのかその時は解らずに居た。ただ沢庵を食べたいと言ってくれる事が嬉しかった。
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