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それから、特に何も起こらず、数週間が経った。
間者からの文の事も忘れかけていたある日
女中の仕事を終わらせ土方さんの部屋で文などの整理をしていると
ドタドタドタ
バンッ
襖が勢いよく開き
土方さんが入ってきた
その形相はとても不機嫌で話しかけるのさえ躊躇しそうなくらいだ
茶を湯のみに注ぎそっと土方さんの前に差し出す
土方「ああ、すまねえ」
華恋「また、芹沢さんですか」
土方「チッ・・・ああ、今度は女を囲ってやがる」
華恋「ああ、菱屋のお梅さん」
土方「知っているのか」
華恋「ああ、芹沢さんのお部屋にお酒を持って行った時に何度かお会いしましたよ」
土方「そうか、連れ込むだけならまだしも、ここんと菱屋には帰らず住み着いてやがる」
ああ、そう言えばお梅さんが芹沢さんとそんなことを話していた。
土方「芹沢さんは何を考えてやがる、酒飲んでは町で暴れてその後始末をさせられる奴の身にもなってみやがれ」
そう、芹沢さんは酒癖が悪く町で飲んでは気に入らなければ暴れて金を出させたりとしていた為京都での壬生浪士組はあまり良く思われていなかった。
その度に、副長である土方さんが後始末に奔走していた。
私の予知で何度か未然に防いだ事もあるが、どうも全部が全部予知として見えるわけではないようなので防げないのがほとんどだった。
この所、毎晩のように呼び出されてるので、土方さんは怒っているのだ。
眉間に皺が寄りっぱなしだ。
私は、土方さんの眉間に指をあてた。
土方「華恋」
華恋「ずっと、眉間に皺が寄りっぱなしです。戻らなくなりますよ。愚痴ならいくらでも聞きますから」
土方「ああ」
そっと抱き寄せられる。彼から煙草の匂いがほのかに匂う、その匂いが何故だか心地よく安心させてくれる。
土方さんの背中に手を回し寄り添う
土方「華恋、今から町へ行く、お前も一緒に来い」
華恋「え、いいんですか」
勢いよく顔を上げ土方さんを見る
土方「ああ、此処にきて数か月ずっとこもりっぱなしだったからな、俺の所用ついでだがすぐ終わる故、その後お前の行きたいところに連れて行ってやる」
ギュッ
再び土方さんに抱き着き
華恋「嬉しい、ありがとう」
土方「ああ・・・・//」
少し照れたように土方さんは顔を反らした。
それから、私はやりかけていた仕事を急いで終わらせ出かける準備をした。
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