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「…くっ…ひっく…」
路地裏からすすり泣く声が聞こえた。
幼い女の子が肩を震わせ、膝を抱えて泣いていた。
僕はそっと優しく声をかける。
背中に死を示す刃を隠して。
「どうしたの?」
女の子は顔を上げずに涙声で一生懸命答えようとする。
「うっく…寒い…寒いの…痛いよぉぉ!」
痛いと言った瞬間、女の子の腹部から血が流れ、真っ白だったワンピースを紅に染め上げる。
近くには女の子の真っ赤な体が転がっている。
かわいそうに…
通り魔にやられたんだな…。
僕は女の子の瞳と合うようにかがみ、手を差し出す。
「一緒にかえろう?君はもう寒さも痛みも無いはずだよ」
何かを探るように、泣き止みじっと見つめてくる澄んだ瞳をしばらく見つめ、不意に抱きしめる。
儚く消えてしまいそうな朧の月が見送る中を女の子と僕は闇の向こうへと消えた。
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