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その日は、とにかく天気の悪い日だった。
物凄い雨で、飲み会を中止しようかなんて話しも出ていた。
でも、新人の歓迎会も含めたきちんと会費もとっている飲み会だ。
中止するわけにはいかない。
なんて言いながら、ただその日はなんとなく飲みたい気分だった。
延期したっていいぐらいのもんだったのに。
それでも幹事も延期は面倒だったようで、少し煽ったぐらいで飲み会は無事決行となった。
急なキャンセルは仕方がない。
先に会費をとっていたから、若い奴らはみんな出席しているようだ。
「上原さん、けっこう飲めるんですね。」
隣に座っている大学生のアルバイトが言ってきた。
「そうか?」
「はい。だってこれ何杯目ですか?」
「さあな。」
俺は酒に強い。
中学生の時から親父に鍛えられた。
酒が飲めれば出世するという、親父の理論。
それが特別嫌だったなんてことはあるわけもない。
母親は嫌だったろう。
でも俺自身、今となってはとても助かっている。
ちらっと、向かいの一つ通路を挟んだ離れた席を見る。
田端悠人が座っていた。
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