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こういう飲み会にはあまり似合わないタイプの男だ。
安くて不味くて、がやがやした店はなんとなくあいつには似合わない。
名前のわからない女子と話している。
にこにこと優しそうな笑顔で。
特別に話をしたことがあるわけじゃない。
いつも変わらない顔をしている。
でも時々、本当に時々、淋しそうに笑うのだ。
本人が自覚しているかわからない。
『淋しそう』も、ただの俺の妄想かもしれない。
それにそれがどんな時なのか、俺には想像もつかないことだった。
それなのに、あの笑顔の裏にある、瞳の奧にうっすら張った膜に、なぜか俺は気付いていた。
「‥さん。上原さん?」
「え?ん?」
「どこ見てるんですか?」
「いや‥」
「狙ってる子いるんですか?」
「は?なんだよそれ。」
「だってさっきからあっちのテーブルばっか‥」
隣のバイトがまだ言い終わらないうちに席を立った。
自分のグラスを持って田端悠人の席に移動した。
「上原せんせい、お疲れさまです。」
にこにこと可愛いバイトの女の子がグラスを差し出してきた。
カチンと乾杯をし、ぐいぐい飲む。
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