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「おぉ、サンキュ。」
「いえ。」
顔を上げると、可笑しそうに俺を見ている田端が立っていた。
「まだやるんですか?」
笑顔だった。
ふわっと、いきなり癒されて心臓がドキンとした。
答えるのが遅れる。
「‥いや、もうそろそろ。」
「すごい眠そう。」
「まぁね。」
じゃあ、と行こうとするので慌てて財布を取り出した。
「なぁ、コーヒー代‥」
百円玉を差し出すと、そっと手を押さえられた。
「いりませんよ。」
手が触れていることに気付いたからなのか、ぱっと焦ったように田端は手を引いた。
「や、勝手に‥買ってきたし。お疲れさまでした。」
ぱたぱたと行ってしまった。
百円玉を持ったまま、しばらくポカンとしていた。
ふわんとした空気。
妙な心臓。
一人なのになぜかわざとらしい咳払いをし、百円玉をそのまま財布にしまった。
触れた手を見る。
別に、なんでもないことなのに。
手にかすかに移った体温がいつまでも残っている気がした。
「どこ行きますか?」
はっと、飲み会の最中なことに気が付く。
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