上原くんと田端くん

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しっとりとした雰囲気のバーに二人で入る。 「いらっしゃいませ。」 黒のスーツ姿で品の良い笑顔。 やっぱり、こいつにはこういう方が似合う。 カウンターの隅の席に座る。 「何飲む?」 「う~ん‥あんまり来たこと無いから。」 ぱらぱらと細長いメニューを見ている田端の前髪が濡れていることに気付く。 指で少し拭いてやった。 ぱっと顔を上げ、少しだが赤くなった気がした。 間接照明のせいか‥ 「なんかおまかせって出来ない?」 バーテンダーを呼んで適当に作らせる。 いい機会だと、彼のイメージに合ったものを、と注文に付け加えた。 「かしこまりました。」 どんなカクテルがくるのか、バーテンダーは特徴を捉えるのが上手い。 俺の意識が間違いじゃないとわかれば、それだけでも救われる気がするからだ。 「お待たせしました。」 縦長の丸いグラスに注がれていたのは、ピーチリキュールベースの赤とオレンジの混ざった典型的な癒し系の色。 「やっぱり‥」 「え?」 「いや、美味しそうじゃん。」 「うん。」 .
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