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手拭いで拭こうにも、最早畳が全ての水分を飲み込んでいる。
涙目で俯く勝之進に、銀之助は溜め息混じりでもう一度水を持ってくるよう頼んだ。
怪我は未だに鈍い痛みが続き、正直少しでも早く冷やしたい為口調も荒くなる。
桶を抱えて脱兎の勢いで飛び出した勝之進を見送ると、参入者の片割れに鋭い視線を突き刺した。
別段謝ってもらいたいとも思っていないが、他人事の様に佇む姿が癪に障る。
総司の内心は穏やかさが戻り始め、本懐を遂げようとこちらも銀之助に向き直った。
だが反抗的な眼差しに対抗し、細めた瞳は謝意を胸中へ押し込める。
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