大きな国

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「ねぇ~…キ――ノ―!」「………」 「ねぇったら!!…もう!…」 左右に草原が広がる、凹凸の少ない道をモトラド(注・二輪車。空を飛ばないものだけを指す)が走っている。空は晴れて太陽がもうすぐ真上に来そうだ。 モトラドはしつこく運転手に叫び掛けているが、強い風に流されているのか運転手には聞こえていないようだ。反応が無いまま運転手はモトラドを運転する。 「エルメスさぁ…暇なの?もう少しで次の国だから我慢して」 かなり前にキノと呼ばれた運転手は、十代半ばほどで、短い黒髪・大きな目で精悍な顔立ち。白いシャツに黒いジャケットを着て、ズボン姿。腰は太いベルトで締められている。 右腿にはハンド・パースエイダー(パースエイダーは銃器。この場合拳銃)のホルスターがあり、大口径のリヴォルバーが入っている。腰の後ろには自動式も一挺。 「さっきも『もう少しで~』って言ってたよね?」 モトラド――エルメスは愚痴を溢し始める。 そんなエルメスを宥めながら走っていく。 「あれだっ!!エルメス、お待ちかねの国だよ」 「やっとかぁ~…」 キノが嬉しそうにエルメスに呼び掛け、エルメスは安息の時を思いながらそれに答えた。 何もなかった道の真ん中に、大きな門があった。この国の入国ゲートらしく、門番兵が立っている。この兵もまた大柄な男だ。
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