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軽く手を振りつつ言われ、俺は反射的に手を振り替えした。
「あ……うん」
俺の返事を確認すると、音羽はにぱっと笑いすぐに走り去っていった。
音羽が向かった先の物陰からすっと誰かが出てきて音羽に何か話しかけている様だった。
この位置からだと相手の顔は見えないのだが、旧式の学ランを羽織っている男子生徒、と言う事はすぐに分かった。
嫌そうな表情で話しかける音羽に対し、その生徒は何か楽しげに話しかけている様に思えた。
ぎゃーぎゃーと騒ぐ音羽の事などまるで無視しているかの様な対応だ。
手首を捕まれる度、嫌そうに必死に手を振っている音羽の表情を見ていたらふと思った。
確かに音羽は嫌そうにしているのだが、同時に幸せそうな表情にもなっている様な気がした。
山本と一緒にいる時も確かに幸せそうだ。
でもその時とはまた別の幸せそうな表情に見える。
山本以外にも音羽が一緒にいたいって思う人物がいるとは以外に感じた。
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