第一章.堕落

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背中から声が聞こえた。聞きなれたその声の主が信也であることは見なくても分かる。 声の調子からして、痛みを必死に堪えている様子だ。 「俺は大丈夫だから…もう…やめ──」 ぱん。 と乾いた音が響いた。 信也から見える匠の背中が、少しずつ萎縮していった。小刻みに震える匠は、泣いていた。 「俺…殺した…っ!」 意志とは裏腹に震えは止まらない。 引き金を引く前はこれを引けばすっきりする、恨みが晴らせる、と思っていた。 だが、残ったのは計り知れない恐怖と反動による手の痺れだけだった。
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