第一章.堕落

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男はそれだけ言って踵をかえした。猫背気味なその姿は、見た目にもやる気が感じられない。 その曲がった背中に椅子に座った男が話しかける。 「分かり切ったことを言うな…ただ単に、こいつはまだ助かるかもしれないと思っただけだ」 「…優しさのつもりですか?」 「そうなるかもな」 猫背の男は立ち止まり、振り返って言った。 「この前なんて五日間の奴が三日目で精神を病んで自殺したんですよ…?」 それを聞いた男はにやりと笑って、言った。 「手間が省けて良かったじゃないか」
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