第二章.招待状

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「お兄ちゃん…?」 「うわっ!…びっくりした」 「何ボーッとしてんの?なんかあった?」 「いや…何でもない」 最近このようなやり取りを一日五回はしている。 というのも、あの日─人を殺した日から毎晩夢を見るのだ。 恐怖に顔を歪ませた男の額に拳銃を突き付け、引き金を引く。発射した弾丸が男の脳まで達し、男を絶命させる。 助けてくれ、と乞うのも構わずに撃った時のあの怒りは既に薄れたが、絶命した男の目を見た時のあの感覚だけは消えない。 取り返しのつかないことをしたという後悔よりは、墜ちるところまで墜ちたという後悔と言おうか。
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