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本当はこの時間に出勤する必要はなかった。
ただ、表向きそうしなければならなかっただけだ。
妹の前いや、少なくとも自分達の境遇を知る者の前では、亡くした両親の代わりをする出来のいい兄でいなければならない。
定時に身形を整えて家を出て、離れた土地へ移動する。そこで『仕事』をして、定時に帰宅する。
夜になればまた家を出て、『仕事』をする。
移動に要する交通費、家賃などの生活費、年頃の妹のお小遣い…。
毎月毎月飛ぶように無くなっていくお金を、どう工面するかが問題だ。
父親を亡くしたときは、もちろん絶望した。
言葉で表せるものではないが、強いて言うなら絶望だ。
だが、現実はそう甘くない。
感傷に浸る間もなく金の問題が二人の前に立ちはだかった。
当時中学生だった由里には出来ることない。
俺が学校を辞めて働こう。
そう決めた。
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