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ダンボールの暗い中、パソコンに向かう髭を生やした初老のオヤジが一人・・
パソコンは自作したのであろうか・・色々なパーツが組み合わさっているようである。
傍には食べかけのお椀・・ハエが飛び交っている。
風呂など、何週間も入っていないため、体臭がきつい。
まあ、この環境下で「臭い」など言う人などいないのだが・・
ネットに繋いでいるが、どう見てもプロバイダー契約が出来るような身分ではない。
この「ヤスさん」にとって、違法接続など朝飯前のようだ。
パソコンの画面に向かって何やら考え事をしている様子だ。
「ヤスさん、考え事かい?」
「うむ・・・オレの友達が大変なことになってるんだ・・何とかしなけりゃな・・」
「ふうん、俗世間の友達か・・ヤスさん、世を捨てたんじゃないのかい?」
「そのつもりだったがな・・」
「なあ、何でヤスさんみたいな人が、こんな所に居るんだ?
ちゃんと仕事してれば、全うな暮らしが出来たのに・・」
「まあ、人には事情ってもんがあるんだよ。
そろそろ行くか?ハラが減っては戦はできぬってもんよ・・」
「イクサかい・・?」
パソコンの電源が切られ、発電機の駆動音が止まる。ダンボールの固まりから姿を現す「ヤスさん」・・
ボランティアの炊き出しへ夕食をもらいに公園の向こう側の広場へと向かう。
今日のメニューはシチューだそうだ・・・
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