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5.病院で・・
都内から少し離れた町の総合病院・・
5階の病室のベットから、窓越しに町の様子を見るパジャマ姿の女性。
頭にネットを被っている。
良く観ると、頭髪が抜けてしまっているようだ・・
肌は、少し荒れ、皮膚が所々割れている。黄疸も所々にある。
「血液内科病棟」
その女性の手元には、スケッチブックと鉛筆。
ベットの前に置かれた小さな机の上には、一輪挿しの花・・
それを描いている最中に、夕暮れ時の空を見つめていた・・
一人の看護婦が彼女に近づく。
「美香さん、そろそろ夕食の時間ですよ・・」
「はい。」
「ふふ・・絵を描くのが好きですね・・」
「ええ、絵を描いていると、忘れられるんです。」
「どうしたの?考え事?」
「ええ、私の友達が・・」
少し暗くなった町を見る。外灯が灯りだす。
「変ですね・・私、明日をも知れない命なのに・・心配な人が居るんです・・」
「美香さん・・」
うつむく彼女を見守る看護婦の姿・・
電脳同盟・・それは、名ばかりのささやかなつながり・・
明日をも知れない者たちの、希望も持てない者たちの
たった一本の最後の綱・・
それが、真実だった・・
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