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「ヤスの気持ち、少しなら分かるで」
嘘つき。嘘つきが人を嘘つき呼ばわり。偽善者なんか大嫌いだ。昔から。‥昔?昔はいつから昔?わからない。頭が痛い。
「俺、ヤスのこと救いたいと思っとる」
止めろ。綺麗事は白色よりも大嫌い。腹立つんだ。何も知らずに綺麗に笑う白が。
「俺だけやない、みんなもやで」「‥嘘や」眉が下がる渋やん。
記憶を無くしてから人というものの思い出は全て嫌な思い出。良い印象なんか、1つも無い。
人間は自分勝手で私欲に忠実に生きている。思い通りにならなければ相手の悪いところを挙げ満足する。醜い。
「みんなどうせ、消えるんよ」
自暴自棄になる。あぁ、失笑。
「消えへんよ」「嘘や。だって」俺が消すもん。
だから言ったんだ。人間は私欲の塊だと。俺は人を殺すことによって欲求が回復される。相手が綺麗な白であればあるほど笑みが増える。
常に所持しているナイフを渋やんに馬乗りになって突きつける。首を傾げる。なんで、怯えない?
「なぁ、ヤス」
なんで、泣くん?
渋やんも首を傾げる。‥泣く?俺は泣かんよ。心が無いから。泣けへんよ。
「ほら、泣かんで」渋やんが俺の頬を撫でる。
自分の指先で確認。‥涙‥?
「辛いなら我慢せんでええんよ」
優しい温もり。渋やんに、抱き締められている。
「ないふ、あぶないで」「知らんわ」ふ、と笑った。
涙が頬を伝う。
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