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ケーキが入ってるらしい箱と深海さんを交互に見てると、がしがしと頭を撫でる力が強くなった。
「何だ、坊主。ケーキ嫌いだったか?」
「え、す、好き、ですけど……、深海さん……、どうして誕生日知って、る、んですか……?」
「あ?」
「えっと……俺、教えてない、ですよね……?」
そう言えばみんなに教えてなかった。
でも、深海さんはプレゼント、とケーキを買ってきてくれた。
不思議で深海さんを見上げれば、物凄い表情をしてて。
周りの空気が下がった!!
「……誰にも、今日、言われてねぇ……のか?」
「え、あ、はい」
「……あんの、野郎共っ!!!!」
深海さんが怒り絶頂に張りのある声で怒鳴りながらリビングへ歩まれた。
その迫力であまりの怖さに立ち尽くした俺。
「…………ハッ!!」
こんなとこで呆然としちゃダメだ!
何かわからないけども、兄ちゃん以外のみんなが危ないのは確かだ!!
慌ててリビングの方へ駆け寄れば、深海さんが上着を肩にかけてしゃがんでる、その前に3人が正座して俯いてた。
……怖っ。
「てめぇらよ……、坊主が先に帰ってきてんのに、誕生日だと祝ってやんなかったのか? あぁ? 一日何してたんだよ。言ってみろオラ」
「う……、若の代わりに、ゆ、夕飯を作ろうとして……」
「そ、それで、何かごちゃごちゃ散らかして……」
「若葉ちゃんが帰ってきて片付けて貰いましたー……」
「……ああ?」
ヒィィイ!!!!
こっちからは深海さんの背中しか見えないけど、3人の顔が真っ青になったのを見たら、怖さが伝染してきた!
震えてるといつの間にか隣にきた兄ちゃんが俺の手からケーキを取り上げ、頭を撫でてくる。
「あの馬鹿共が……誕生日を教えろ、と言うから教えてやったと言うに」
「え……、兄ちゃんが、みんなに俺の誕生日、教えたの?」
「あぁ、昨日の夜に聞かれてな。それで何をやらかすと思えば、人の愚弟の迷惑のかかることばかり……」
「……じゃあ、祐一郎さん達がキッチンを散らかしたり、榎本さんが生クリーム泡立ててたり、二人が買い出しに行ってくれたり、深海さんがケーキ買ってきてくれたのは……兄ちゃんが教えてくれたから?」
「これなら、教えないでいた方がマシだったか。余計なことを増やす羽目になった」
「ううん、良いよ」
つまり、みんな俺の誕生日を祝ってくれようとして頑張ってくれた訳だよね?
なら、すごく嬉しい。
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