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…………。
ご飯を食べて、深海さんの買ってくれたケーキも食べて、後片付けもして、お風呂も準備して、洗濯ものを畳んでたはずなんだ。
それが何故、俺は今、兄ちゃんの膝の上に座らされてるのでしょうか。
「に、兄ちゃ「黙れ」…………」
さっきからこれだ。
見てる訳でもないテレビに顔を向けてるだけの兄ちゃんの両腕は俺の腹をホールドしてて、動くに動けない。
どうしたものかと辺りを見渡せば、祐一郎さんが不貞腐れながらこっちを見てた。
「わーかぁ……」
何か物凄く罪悪感を感じるのだけども。
よく見れば峰さんや榎本さんも、何か言いたげにこっちを見てる。
ちなみに深海さんはビールを飲んでた。
「兄ちゃん、あの……これは?」
「大好きなお兄様と一緒にいれて嬉しいだろ」
「いや、この体勢がですね」
「今日が終わるまで、このままだ、喜べ」
「……わーい」
ダメだ、兄ちゃんが聞き入れてくれない。
と言うことは、ずっとこの体勢かぁ……んー、洗濯もの今日無理かぁ。
何かする訳でもないので、兄ちゃんの膝の上で足を揺らしてると、時折頭を撫でられる。
何、この甘やかし方。
普段の兄ちゃんからは想像絶する奇行なんだけども!
鳥肌を立てつつされるがままにしてると、祐一郎さんが徐に立ち上がって2階に走ってった。
「若盗られたぁぁあ!!」
「ゆ、祐一郎さん!?」
そんな大声で何を!?と突っ込もうとする俺、よりも早く榎本さんも立ち上がった。
「むー……何だか、つまらないなぁ……もうオレ寝るー……」
こんなテンションの低い榎本さんを見たことがない。ふらふらと立ち去る榎本さんに続いて峰さんも立ち上がった。
「っ、別に、何とも思ってないし!!」
別に俺何も言ってないのに、峰さんは怒りながら2階に行ってしまった。気付けば深海さんもリビングにいない。
な、何でみんな不機嫌だったんだろ……と首を傾げてると、兄ちゃんが小さく笑った。
「ふっ。これでお兄様の物と再確認出来ただろ」
「え、何が?」
「お前がお兄様の玩具で弄り倒したい愚弟と言うことだ」
「家族愛が歪んでるよ、兄ちゃん」
「お兄様だ」
「…………」
そのまま他愛のない話をして過ごし、12時を過ぎた瞬間に兄ちゃんは俺を解放し、帰った。
なんと言うか……最初と最後が兄ちゃん、って何か濃いけど、いつも誕生日はそうだ。
こうして俺の誕生日は終わり、俺は残ってる洗濯ものに手を伸ばしたのだった。
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