祝われたい5月

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深海さんに名前で呼ばれたので照れ臭く思いながらも、今日も朝が来た。 「そうだ、折角だし」 深海さんから貰ったエプロンを肩からかける。兄ちゃんから貰ったエプロンは、洗濯しよう。 「へへ……」 何かちょっと嬉しい。 今年の誕生日はいっぱい貰えたなぁ、とキッチンに向かうと、2階から足音。 「わっかばちゃーん、おっはよー!!」 「あ、榎本さん、おは……よ、う……ご、え?」 階段から降りてくる榎本さんは、ぐるぐると赤いリボンを全身に巻いてて。 え、何してるのこの人。 思わず反応に困ってると、榎本さんが抱き着いてきた。 「1日遅くなったけどー、プレゼントだよー」 「ぷ、プレゼント?」 「オレでーす」 「…………」 あぁ、そっか。 深海さんが昨夜言ってたことを思い出す。 榎本さんも、優しさと言うのに飢えてるのかも知れない。それに、俺の誕生日を祝ってくれるつもりだし。 俺は抱き着く榎本さんの背中を、ポンポンと叩く。 「じゃあ、有り難く貰いますよ?」 「……えっ」 「プレゼント、ですし」 何だか甘えた子供みたいだと思えば、全然平気だ。祐一郎さんで慣れたし。 予想してない切り返しをしたのか、榎本さんは呆然と見てる。 俺はそんな榎本さんの様子がおかしくて笑うと、榎本さんの頬がじわじわ赤くなった。 「……若葉ちゃん、オレ、どきどきしちゃう……」 「……へ?」 「……こんな気持ち……感じたこと、ないなぁ……」 顔を真っ赤にして俯く榎本さん。 こんなしおらしい榎本さん、見たことないかも、と繁々と見てるとぎゅっとキツく抱き締められた。 「え、榎本さん……?」 「若葉ちゃん……良い?」 「え、何……」 顔を近付けてきた榎本さん、の頭にスリッパが当たった。 投げたと思われる方向を見れば、眠たそうな表情で睨んでる深海さんと、不機嫌丸出しの峰さんだった。 「あぅ、痛いなぁー」 「うるさい、変態!!」 「オメェは朝から何してんだ」 「えへ、プレゼントでーす」 リボンを掴み、ぱたぱたする榎本さんに、もう一足のスリッパが顔面にべしりと当たった。 「もー、折角イケメンなのに」 「もう死んでよ」 「一回ぶた箱入っとけ」 「ふ、二人とも酷いですよ!?」 「うわーん、若葉ちゃーん」 泣き真似をする榎本さんに、2本の拳が飛んできたのは、何かもう言わずもがなだった。 朝から元気だなー。
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