祝われたい5月

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祝われたい5月

「若葉の誕生日? 随分今更だな。 それで? 聞いて何をするつもりだ? それに、俺がお前たち風情に気安く人の弟の誕生日を教えると思ったのか? 随分めでたい頭をしている。 いつも世話になっているから? そんなもの当たり前だろう。お前たちの世話をするようにと、この俺がわざわざ連れて来てやったんだからな。有り難いと思って感謝し続け、そして若葉に手を出すな。殺すぞ? それに、だ。お前たちは以前の管理人の誕生日を祝ったのか? 急に若葉だからと祝おうとする魂胆が理解に苦しむ。あいつの誕生日は、俺だけが祝えば充分だ。 ……チッ、しつこい。そんなに知りたがってどうする。どうせ、若葉も俺が言うまで誕生日を忘れているんだ。別に祝って欲しいとは思ってない。それなのに祝うのか? 随分エゴなんだな? よくしてやるのは当然。この俺の弟だ。家事が一流なのも、面倒見が良いのも、当たり前に決まってる。自分の仕事はきっちりやる奴だ、あいつは。 は? 本人に言ってやれだと? ふざけるなよ。こんな分かりきったことを簡単に言葉でいちいち表現するなんて、愚かな奴がすることだ。そんなことより、少しでも理解してやって甘やかす方が良い、若葉には。 ……何だ。正直、お前たちと話してること自体、俺からすれば時間を無駄にしているに等しい。誕生日が知りたいなら本人に聞けば良いだろう、鬱陶しい。 は? チッ……本当にお前たちは俺を苛立たせてくれる。 こんな夜中に呼び出して、俺を苛立たせるのが目的だったんじゃないのか? …………明日だ、明日。5月7日。 何だ? その残念そうな顔は。 あぁ、もうすぐに若葉の誕生日だからか? 残念だったな。だが、ここまで聞かないお前たちが悪いと思わないか? ま……せいぜい頑張れ? 何を頑張るかは知らんが、若葉に何かした瞬間に、命はないと思え」
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