Prologue

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  U.N.0003 5.11 完全武装解除と平和主義の理念を掲げた当初の世界連邦体制は崩壊し、銃と大砲と、絶え間ない喧騒と紛争がほとんど地球圏の全土を覆い尽くした。 この事実を記すと共に、将来これが必要視される日が来る事を願って、この遺言を後世の人々の為に書き残すものとする。  * * * 戦争や紛争はあってはならない。 とするならば、それらを打倒するものとして、軍や抑止力の存在を正当化する事もあってはならない筈である。 私は、将来世界連邦政府が以前の尊厳と誇りを取り戻し、正規軍たる世界連邦 国防特殊機械化警察軍の解体を推進する事を切に願う。 それは人という生物が互いを理解し、神格化する為に必要不可欠な第一段階だ。 先鋭化した文明は、他の生物や文化を汚し、罵倒し、破壊する事をしない。 より良い解決策を見いだし、ついに対話と恒久平和の当たり前な世界で営むのだ。 そして私は、私が識った事実を真実として受け止め、柔軟且つ明快な喜ばしい将来を想像して創造出来る人々の誕生を此処に確信する。 恐らく、彼らの胎動は既に始まっているだろう。 真に神格化した人々は、今この瞬間も、俗世間の中で悠々と活動している。 これは、先人達が数十世紀も前から預言されていた。 しかし、私は強く危惧している事がある。 人為的に人という種の神格化が阻害され、人が内に秘めた可能性を喰い潰し、元来魂が持つ力が悪用される事である。 それは、核や反物質兵器よりも恐ろしい。 人の心を修正不可能な状態にまで、ずたずたに引き裂いてしまうものだ。 ヴァルター・アルノルト『EZUNS REPORT』裏表紙 直筆の遺言より  
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