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“極少人数戦力による敵性勢力施設への侵攻・殲滅構想”。
通称〈T2構想〉とも呼ばれた戦略構想は、ノリス・L・クロフト教授が〈第零艦隊〉の最新鋭兵器開発に携わっていた当時に考案したものだった。
200年前、《旧 統一政府軍(UGF)》が採用していた〈T.system(Talmod.&Terminal.system)〉を復元し、新たに粒子間磁場コントロール・システム〈Troia.system〉を用いる事で更なる発展・向上を目指した本構想は、教授が〈UNM-560T2〉という試作型を完成させた時点で軍を離反し、一時頓挫したが、〈第零艦隊〉が誇る優秀な技術者達によって一応の完成品が生み出された。
それが、〈アッチェント・グラーヴェ〉である。
第九世代D.E.M.として完成された〈UNM-000R グレイヴ:R〉を基礎とし、強化外骨格装甲〈アイギス・アームドⅦ〉を搭載するという考えは教授自身が当初より計画していたもので、〈T.system〉によってパイロットの脳波と直にリンクする無人機〈ネハシム・セラフ〉や無線攻撃端末〈ハ=マルアハ改〉はその開発と研究の所産と云えた。
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〈アッチェント・グラーヴェ〉のコックピットは、他のD.E.M.と変わらず、その上体の背部に設けられていた。
特務機動艦隊に配備されるという事で多少の改善は成されているようだが、限られた空間に設けられた、更に限られた空間のコックピットは、殊更狭く感じられる。
シュナイツ・アレインは、トリエスタ・ユルンゲルという男ではなかった。
かと言って、他の誰か、というわけでもない。
終始幽体離脱したかのように全身をたゆたせながら、〈アッチェント・グラーヴェ〉のコックピットを覗いているのだ。
いつも着用する不気味な仮面を外し、変わりに特別なヘッドセッドを装着したノベンタ・ヴァーテミウスという男は、しかしどこまでいっても不気味の一言に尽きると思った。
この男は自分の事を買ってくれているようだが、自分はどうもこの男が好きになれない。
なんというか、全身から強烈なオーラを放っているように感じるのだ。
そしてそれは間違い無く、“明確な殺意”によるものだとも思っていた。
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