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〈アッチェント・グラーヴェ〉が唐突に浮上し始めたのと、数十基の無線攻撃端末〈ハ=マルアハ改〉が地上に降り注いだのとは、ほぼ同時だった。
内部の小型反物質炉を暴走させ、それ自体が“反粒子爆弾”と化した無線攻撃端末達は、地上に接する前に対消滅を起こしながら暴発する。
地上が対消滅の眩い光の絨毯に覆われ、轟音と共にあらゆる物質が消滅し、叉は破壊されていく様を遥か上空より見、ヴァーテミウス大佐はヘッドセッドに埋まった表情をニヤリと歪ませた。
シュナイツの淡い期待は、最悪な形で裏切られた。
この男、あまつさえこの破壊に喜びを覚えているではないか。
絶句すると共に、これまで信じられてきた全てがグニャリと歪んでいくように思えた。
「〈ブラジリア〉の掃討、ほぼ完了。
しかしながら、“国家議会議事堂”は未だ健在。
これより撃滅する。」
コックピットに内接された無線にそう呟いて、〈アッチェント・グラーヴェ〉は更に上昇を始めた。
その時、シュナイツは戦慄していた。
国家議会議事堂と云えば、《LCMU》の権力中枢だ。
そして其処には―――……。
受話器を握り締めたままに窓の外の世紀末を絶望の面持ちで見る、トリエスタ・ユルンゲル最高議長がいた。
彼だけではない。
《LCMU》を影で操り、数代に渡ってその国の体制を維持してきた《13人評議会》評議員達も、恐らく居るだろう。
新世界の夜明け前に、《世界連邦》は長年の敵対国を再起不能に追い込むつもりだ。
それも、真相が全く明るみに出ない形で。
しかし、シュナイツは解らなかった。
何故ここまでしなければならなかったのか。
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