54人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺達が見てる世界は極彩色だ。それが世界なんだろう。けど俺は、レンズを通してまで同じ世界を映したくはない。何と言うか……もっと淡泊な色が本物の世界だと思うんだ。概念みたいな話だからわかりにくいとは思うが」
いやあ、よく喋る。
特徴のない普通の男かと思ったのに、話が肥大化していく。色だの、世界だの、オレには理解できない枠組みが奴の頭にはあるんだろう。それを話したくて仕方なかったみたいだ。
……友達、いねェのかな。
「聞いてるのか?」
不満げな顔でこっちを見てくる。あんな一方的な話、誰が聞けるか。
とは言えず、適当にごまかす。
「そうだ。あんた、名前は」
「あんた?」
あ、しまった。相手は二十歳くらいの兄さんで、オレは十四だった。慌てて取り繕う。
「あ、済まない。つい……」
「まあいいが、礼儀がなってないと人生辛いぞ」
思わぬ教訓を賜る。
最初のコメントを投稿しよう!