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「うぅぅぁぁあああああッ!!」
「おい、どうした!」
冬馬の腕。肩を掴む。あァ。人肌。あたたかい。そんなもの、体内の熱を冷ませない。
乱れる呼吸。望む解放。望んでしまえ、そうすれば痛みはなくなって、
あのときみたいに。
『大人しく失神しなさいよ。あなたには彼を殺せないでしょう?』
「いや、だ」
『華は餌を食べないと死んじゃうの。そのために彼に会った。仲良くなりにきたわけじゃない』
「でも、オレは」
知ってしまったんだ。白樺冬馬という人間を。シロクロへの執着的な熱意を。見ず知らずのオレを介抱してくれた、優しさを。
嫌だ。生きるために殺したくない。食べたくない。
食べるくらいなら、死んでやる!
『……なんて、言わせないわよ。臆病者のセーラちゃん』
身体から意識が離れていくのを感じる。入れ替わる。彼女がやってくる。セーラが。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ殺すのは嫌だ、またオレは人を……
……また? 最初は誰だったか、思い出せない。
まま、意識がおちてゆく。
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