Novel

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「でも、歴史上のお姫さまもなかなか根性あったりしません?」  オレはつい先日見た歴史番組の特集を思い出した。 「前田利家の奥さんのまつとか、肝っ玉母さんみたいじゃないすか」 「うー。確かに、歴史の裏には女たちの姿があったわ」  エーミールが言う。  いつの時代もらしいが、女は末恐ろしい生き物だ。政治の道具として嫁がされたかと思えば、旦那の跡取り息子を産むために熾烈な戦いを繰り広げる。昨今みたいなネチネチしたいさかいは昔から変わらなかったってことか。  ……そう言えば、エーミールの書いた小説にも女がおどろおどろしく描かれていたような気がする。 「私も淀殿の息子への執念を描いたりしたけど、イヤよね。あれが女の性なのかと思うと」 「じゃあ、エーミールは歴史の女性なら誰が好きなんだ?」  女の綺麗な姿ばかり求めるおばさんの理想を聞いてみたくなった。
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