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エーミールはえくぼとシワを浮かべて笑った。その表情は純粋な少女みたいで、不似合いだった。
「献身的な女の子が好きよ。でもそのせいで悲しい最期を選ぶ、自己犠牲みたいな考えは嫌いなの。その点、ガラシャは素敵。最期は腹を切れと家臣に命じるけれど、そこには強い愛と信念がある。だから、彼女が一番好きかもね」
だけど、楽しそうに理想を語るエーミールの不似合いな顔は、嫌いじゃなかった。
……エーミールは、本当に殺すに値する人間なんだろうか。確かに見た目はキツくて綺麗な人とはとても言えないけれど、心はまるで少女のように純粋な人だ。
女はしとやかであるべきだと言う腐ったジェンダー論は気に入らねェ。でも、そんなのエーミールに限ったことではないし、逆に言えばそれだけだ。
ツマラナイやつでは、ない。
「エーミールの理想が、小説のヒロインなんだな」
「あら、読んでくれたの?」
ここに来た以上、エーミールを知るためにも読んでおいた。秀吉の寵愛が欲しいために世継ぎを産むことに執着する淀殿。秀吉の寵愛を受けた献身的な姫、ねね。
ねねこそ、エーミールの理想とする女性なのだ。だから彼女の物語はねねをハッピーエンドにする。
エーミールはどこまでも自分の理想を良しとする。
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