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「舞台で、熱を感じたでしょう? あれはワタクシがあなたに植えた『種』。あなたを人ならざるモノにする」
「この世には、人間の力量では理解できないものが数多存在するのです」
「華、をご存知?」
「人間と妖怪の間に産まれた女子を指します。だから異端、数は少ない」
「けれどそれって不公平でしょう、人間は億もいるのに。だからワタクシは考えたのです。人間を華にすれば良いと」
「ワタクシの作った『種』は、心に相反した願望を持つ娘に作用します。あなた、性に悩んでいたでしょう? 女らしく、男らしく。宙ぶらりんのあなただから『種』は芽吹いた」
「芽吹きを、あなたは受け入れた。女らしくありたいあなた、男らしくいたいあなた。そのどちらもあなたの中にはある、言わば二重人格ですわね」
「つまり、あなたは人間として死に、華として生まれた。よろしくて?」
……畳み掛けるような言葉を、オレは理解できなかった。
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