冬の夏乃ちゃん

3/3
前へ
/12ページ
次へ
   突然、後ろからサイレンが聞こえる。  ――救急車だ!  聞き慣れた音の発信源は、見なくても理解できた。何かあったのだろうか。  音のほうへ顔を向けると、すぐにわたしたちを追い抜かした救急車は、右に曲がった。右は、ごく近い場所に所在する有名私立中学校へ続く道だ。そこは、同時にわたしたちの帰路でもあった。  「救急車じゃん。事故かな?」  美咲が冷静に言った。  「どうだろ。怖いね」  わたしたちが歩みを進め、右折すると、赤く光る車が見えた。  同時に、車の下――アスファルトに広がる、血も。  「夏乃、見ちゃだめ」  「う、うん」  酷い事故だということだけわかった。  会話もなく、俯き気味に歩いていたとき  ――だって、雪が綺麗で――  そう聞こえた気がした。  
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加