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突然、後ろからサイレンが聞こえる。
――救急車だ!
聞き慣れた音の発信源は、見なくても理解できた。何かあったのだろうか。
音のほうへ顔を向けると、すぐにわたしたちを追い抜かした救急車は、右に曲がった。右は、ごく近い場所に所在する有名私立中学校へ続く道だ。そこは、同時にわたしたちの帰路でもあった。
「救急車じゃん。事故かな?」
美咲が冷静に言った。
「どうだろ。怖いね」
わたしたちが歩みを進め、右折すると、赤く光る車が見えた。
同時に、車の下――アスファルトに広がる、血も。
「夏乃、見ちゃだめ」
「う、うん」
酷い事故だということだけわかった。
会話もなく、俯き気味に歩いていたとき
――だって、雪が綺麗で――
そう聞こえた気がした。
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