春の夏乃ちゃん

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   「なーんで入学式の前から宿題が出るわけ!?」  ばん!と今日の入学説明会で配布された必修課題の冊子を、これからわたしが使う学校の机に叩きつけた。  四月の春らしい陽気を通り越して、むしろ暑いくらいのこの気温が、余計にわたしをいらだたせる。カーデなんか着てくるんじゃなかった。  「落ち着け夏乃。悪く言うと黙れ」  無駄に騒ぐわたしにすごむと、美咲の綺麗な黒髪が揺れた。  「さいきん美咲こわい」  「気のせい。」  ……即答かよ!  そう思ったけれど、もう喋るなと言わんばかりの笑顔に、わたしは何も言葉を発することのないようにした。  「さて夏乃ちゃん。説明会も終わったんだし、今日のところは帰りますか」  先ほどの(黒に限りなく違いグレーの)笑顔から一変して、いつもの爽やかな美咲に戻る。おお、こわかった。  「う、うん、そうだね。あ!帰りに31寄ってかない?最近わたしポッピングシャワーが」  ――寒いのにアイス?――  ……え?  
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