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仁も先生が打ち終わるのを待ってから、自分の駒を手に取って動かし始めた。 「よくこうして将棋をやったよな」 先生は盤と仁を見ながら、感慨深いといたような言い方をした。 「それは間違いない事実。先生も楽しかった記憶だけはしっかりとあるよ」 先生の番。歩を動かして、仁の番に移る。 「本当に君たち3人が仲がよくて、良い子たちだっていう事は先生も理解している。だからな……先生はチャンスを上げようと思ったんだ」 仁は、ほぼ盤の方は見ずに大野先生の事をじっと見ながら指した。 「そこでだ。普段からこういう訳じゃないんだけど、特別にある提案をしよう」 普段からこういう訳じゃないという部分は、何となく気になる言い方だ。 「もし、君たちが将棋に勝った場合は何事もなかったかのように、元の世界に戻して、そして無事に家まで届けることにしよう。だけど……、君たちが負けたら……」 先生はこう言ったんだ。 悪いが、二度と家には帰れない。
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