29436人が本棚に入れています
本棚に追加
/529ページ
仁も先生が打ち終わるのを待ってから、自分の駒を手に取って動かし始めた。
「よくこうして将棋をやったよな」
先生は盤と仁を見ながら、感慨深いといたような言い方をした。
「それは間違いない事実。先生も楽しかった記憶だけはしっかりとあるよ」
先生の番。歩を動かして、仁の番に移る。
「本当に君たち3人が仲がよくて、良い子たちだっていう事は先生も理解している。だからな……先生はチャンスを上げようと思ったんだ」
仁は、ほぼ盤の方は見ずに大野先生の事をじっと見ながら指した。
「そこでだ。普段からこういう訳じゃないんだけど、特別にある提案をしよう」
普段からこういう訳じゃないという部分は、何となく気になる言い方だ。
「もし、君たちが将棋に勝った場合は何事もなかったかのように、元の世界に戻して、そして無事に家まで届けることにしよう。だけど……、君たちが負けたら……」
先生はこう言ったんだ。
悪いが、二度と家には帰れない。
最初のコメントを投稿しよう!