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築何年になるかも分からないようなボロボロのアパート。俺はその2階に住んでいる。階段を下りて、1階に着くと既に仁が待っていた。
「よお。和也」
「わざわざ家の前まで来てくれなくてもよかったのに」
待ち合わせ場所は、最寄の駅だったはずなのに。よっぽど今日が楽しみだったんだろう。
仁の家はここから10分ほどだから、駅までの距離を考えるとそんなに遠回りしたわけではない。
容姿端麗。頭脳明晰。まさにこれらの言葉が全て当てはまるのが古手川仁だ。
高校時代は常に1位の成績を取り続け、どんな事でも器用にこなす事ができる。
見た目はけっこうチャラチャラした感じなのに、これで頭が良いんだから普通の男からしたらまいってしまうってのが本音だ。
「俺たち、二人だけ?」
俺がそう聞くと、仁は首を横に振った。
「いや、違う。あいつも来るよ。だから3人。駅で待ってると思うぜ」
そう俺たちには、高校時代から今の仲が良いヤツがもう一人いる。
女の子だ。
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