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「それじゃぁお先に失礼します」
安東が職場を出た。
歳のせいか「よっこいしょ」と呟いてからカバンを片手に席を立った。
携帯はマナーモードにしたままスーツの内ポケットにねじ込んだ。
まだ数人残っている同僚達にお疲れさまと声を掛け、僕は職場を出る。
今日は土曜日なので仕事は半日で終わった。
僕の職場は魔法科学省といって、50年前の百日戦争後に作られた。
国営の研究開発機関で、現在では国家の最重要機関の1つになっている。
魔法科学省といっても科学の進歩が劇的に進んでいる現代では、魔法よりも科学の方に比重が置かれている。
これは何も科学の進歩だけでは無く、魔法を扱える者の存在じたいが年々減少しているからでもある。
実際魔法科学省などといっても魔法を使える者、魔法族と呼ばれている者は数人しか職場には存在しない。
以前とは違い、科学力が魔力を抜きつつある現代では、もはや魔法は過去の異物に過ぎないのかもしれない。
もちろん僕は魔法族ではなく、ヒトと呼ばれている種族なので魔法は使えないのだが。
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