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長い長い校長の話をとりあえず聞いていた由香は急に背筋を曲げた。舞台上の彼に少しでも見えないように、と。
由香は176cmの身長が彼女にとって一番コンプレックスだった。
『一年生代表、広田 京』
校長に頭を下げ、くるりと回れ右をした優等生の京を見つめ、あぁやっぱり広田君だ、と認識した。
普段は今風な普通の男の子なのに、やるときはとことんやる。それが由香の知っている広田 京だ。
今日は県立大和高校の入学式。受験日に由香の隣の席に座っていたのは、中学バスケ部のヒーローこと広田 京だった。
由香も中学時代、先輩のスカウトによりほぼ無理矢理にバスケ部へ入部させられた。当時から他の女の子の頭ひとつぶん大きかったのだ。
違う中学のバスケ部員だった彼は、話によるとほとんど練習には来なかったらしい。しかし試合ではユニフォーム七番を着て、チームを勝利へと先導していた。彼のいた三年間、その中学校のバスケ部は必ずベスト4入りを果たしていたほどだった。
また、女の子に好かれそうな甘いマスクによりどの中学と試合をしても女の子の視線を独り占めにしていた。
由香はそんな彼が嫌いだった。
持って生まれたものに頼って練習もせず勝利する。それが無償に腹立たしかった。
受験日までは。
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