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目の前を桜の花びらがさぁっと流れて、あぁまた春がきたのだと美月は思う。
『一年生代表、広田 京』
今日は県立大和高校の入学式。窓際の席でぼんやりと外を眺めていた美月は、ふと舞台上に目を向けた。
どうやら一年生の代表の子が挨拶をしていたらしい。入試試験でトップの点数だった子が選ばれると、噂で聞いていた。背の高い男の子が校長に頭を下げ、回れ右して舞台から降りていく。
『一同、起立』
ガタガタと椅子を動かす音を立て、美月以外の全員が起立した。
「美月!」
横に立つ豊が小声で呼び掛け、美月ははっと我に返り、慌てて立ち上がった。
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