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入学式の日はまだ二、三年生は春休み中だ。午後からは部活の許可が出ているらしく制服を着慣らした生徒何人かとすれちがう。
「丹波先輩いるかな??」
ルイはうっとりと呟いた。丹波先輩は今年三年生の剣道部主将だ。美月やルイの中学のOBで、ルイは中一から丹波先輩に憧れていた。だから今までいろいろな人に告白されているがことごとく振り続けていた。
高校に上がったらもう一度丹波先輩に告白する。ルイは丹波先輩が中学卒業のとき決意していた。
可愛くて一途なルイ。きっと丹波先輩も卒業式の日に告白し、泣きながら見送ったルイの事を覚えているに違いない。
「ルイならきっとうまくいくよ」
丹波先輩の卒業式の日を思い出しながら美月はひとりごちた。
剣道場は思いの外狭い。
こっそり中を覘くと剣道技を着て練習している先輩達が五、六人見える。そのなかに丹波先輩もいた。
「すみません。見学したいのですが…」
美月は小声で言った。
と同時に、先輩達がこちらを振り向きうぉー!!と叫び、丹波先輩が抱きつかんばかりに詰め寄って美月達の手をとった。
「ありがとう!!実はうちの部に二年生がいないんだよ。だから今年の一年生が入部してくれないと廃部に…っておまえら!!美月とルイ!?」
「お久しぶりです、丹波先輩」
美月は引き気味でいったが、ルイは嬉しそうにクスクス笑いながら
「相変わらず、厚い男ですねぇ」
といった。
「しかし女子剣道部は部員一人でほぼ廃部状態だぞ。他の部活の方がいいんじゃねぇか?」
丹波先輩は申し訳なさそうにいったが、ルイはもげんばかりに首を振り否定した。
「私達、剣道大好きなんで!!!剣道部じゃなきゃ入りません!!」
ルイのすごい迫力に押されながらも、丹波先輩は向日葵のように笑った。
「ルイもかわんねぇな!じゃこれからよろしくな!」
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