轟きに鳴いた日

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  「おまえの方が怖いわ」  こいつは昔から雷が苦手だ。子供の頃もこうやって時たま一緒に寝ていたが、今とはお互いに立場と状況が違う。  母親とか、他の同性のところとか、他にも行く場所ぐらいある筈だ。  雷がいくら怖いからとは言え、どうして俺なのか。幼なじみの考える事は時々よく分からない。 「おい、こら、しがみつくな」 「……お願いもう少しこのままでいさせてよ。お願いだから」  幼なじみは今にも息絶えそうなか細い声でぎゅっと俺の腰に抱きつく。 「ったく。仕方ねえな」  こう、甘えたような、頼りにしているよ的な事を言われてしまうと、野郎としては何も言えなくなる。  邪魔だから出て行け。言うのは簡単だが、今後の事を考えると、ここでこいつをむげに扱った後が怖い。  それに、男としての威厳みたいなものを少しは取り戻せる機会かもしれなかった。 「分かった。分かったけど、もう少し静かにしてくれよ?」 「……じ、尽力する」  震えた声で呟く幼なじみ。いつもの強気はどこへやら。弱気な幼なじみは、絶えず鳴り響く轟雷に、『怖いぃ』と言って、俺の服を掴んだ。 「俺が一緒にいてやるから、そんなに怖がるなよ?」 「う、うん」  そんな幼なじみを見て、俺は隣の怖がり屋の髪をそっと撫でる。  俺はこんな事しかしてやれない。だが、幼なじみは安心したのか、俺の部屋の嵐も静かになり、その日の嵐の夜は更けて行った。  
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