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今にも消え入るような小さな声で、あの幼なじみが謝ってきたのだ。
俺はついついびっくりして、目を見開いてしまう。
そんな幼なじみをマジマジと眺めていると、涙目な猫目と視線がぶつかる。
幼なじみは、居心地悪そうに目線を逸らし、頬を軽く染めていた。
「ん。いや、そのこっちこそ、その怒鳴ったりして、ごめん」
幼なじみが殊勝な態度を取るとは思いもしなかったので、俺もつい謝ってしまった。
あんな態度を取られると、先ほどまでの怒りはどこかへ行ってしまい、もうどうでもよくなった。
「起きるか」
俺は気まずさを誤魔化すために言った。
幼なじみも『え、ええ、そうね』と言って頷き、俺の上から降りた。
起きようと思い、伸びを一つしながら欠伸をしていると、何故か部屋の扉の開く音がした。
「はわわわ……へ?」
「あ、二人ともおはよう~」
「「ママ(おばさん)!?」」
「今日も2人は仲良しさんだね」
扉が開くと同時にボブカットスタイルの頭が、こちらに向かって微笑みかけて来た。
一見すると女子校生に見える少女だが、彼女は幼なじみの母親で、このアパートの大家さんだ。
「おはようじゃないわ!? 何でママがここに!!」
「えーっと、朝起きたらまな板娘がいなくてね」
「誰がまな板じゃ!?」
「すると、この部屋から娘の大声がして、それで何してるんだろうなあって。それで、2人は何で……」
そう言いながら、つかつかと部屋に入って来るおばさん。やはり俺達のこの格好に質問が及んだ。
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