轟きに鳴いた日

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  「これは、その~」  別段やましい事は何一つしていないのだが、説明に困った。説明次第では『おめでとう!』なんて言い出しかねない。  正直に言ってもいいのだが、『幼なじみが雷を怖いって言うから一緒に寝ました』というしかない。  果たして信じてもらえるか。幼なじみも返答に困っているのか、ひそひそと、耳打ちして来た。 「ど、どうするのよ?」 「どうするって言われてもな。別に本当の事を言ったって俺には被害ないし。おまえが恥ずかしい思いをするだけで」 「そ、それは嫌よ!」  だが、ぶっちゃけそれぐらいしか何も思いつかん。  あとはこのまま何事もなかったように起きて、部屋から逃げ出すという選択肢しか頭の中に思い浮かばなかった。  しかし、それすらもう遅すぎた。 「何か楽しそうだね。いーれて」 「って、うお!?」  いつの間にか、幼なじみの母親は布団の中に侵入していた。幼なじみと二人で俺を挟む形に陣を取り、そのまま寝そべっている。 「何してんの!? ってか、全然楽しくなんかないわよ!?」 「ああ、どう見ても楽しそうには見えねえだろうよ」 「ふーん」 「ってか、あのすみません? そんなにくっつかれると困るんですが」 「だって、こうしないと狭いし~」 「狭くしたのはどちら様? というか、そもそもさぞ当たり前のように侵入してくんなよ!」 「あったかあい」 「もしもし~? 大家さん? ちゃんと人の話聞いてます?」 「ムニャムニャ。あ、また眠くなっちゃった」 「絶対に寝るなよ」  そんな馬鹿みたいな会話をしていると、トントンというノックの音が。  またもや来場者の出現らしい。『なあ、起きてるか?』という扉の向こう側から声が聞こえて来る。 「!?」  今、俺の部屋の前に(幼なじみの)従姉がいるらしい。こりゃあ非常にまずい展開だ。おばさんならともかく、お姉さんがこの状況を見たら何て言い出す事やら。  
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