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「朝食出来たぞって言われて、おばさんの部屋に行ったんだけど、誰も居なくてな」
そう説明する幼なじみの従姉。
非常にまずい。言えない、今その二人はここに居ます、なんて。
「姉さんまで。ねえ、今度こそ本当にどうするのよ?」
「どうするって言われても、俺にだって分からん」
「ちょっと! あんた、何言ってるのよ!?」
「二人は何をひそひそ話してるの? 普通に出て行くのはダメなの?」
「それは駄目よ! 私がこんな男の部屋に、何もなかったとはいえ、一晩一緒に寝たなんている事が知れたらどんな騒ぎになるか。めんどくさい説明だってしなくちゃいけないのよ?」
「仲良しだね、ってなると思うけど」
「ならないわよ!」
っていうか、あんた親だよな。って突っ込んじゃダメかな?
「おい、お前の部屋の中に誰かいるのか? 今、お前以外の声がした気がしたんだが」
先ほどの幼なじみの大声で、流石のその人も段々とおかしい事に気がつき始めた。
「まずいわね」
「だから何が~?」
「こうなったら、誠意を込めて何とか誤魔化す!」
「ゴマ貸すの?」
「そうそう、あの人にゴマ貸してあげるんだ……って、ゴマなんか貸してどうすんだよ! 誤魔化すの! 精一杯誠意のある言い訳をだなぐふ!?」
俺のノリツッコミの途中、幼なじみが俺のこめかみをわし掴んで、黙らせた。
「あんたって人はっ!! この役立たず! 一人だけ開き直るな! 誤魔化している時点で、誠意も何もないわよ!!」
「おいバカ……! 声がデカい!」
たぶん、今の幼なじみの声が決定打だった。
「入るぞ!」
やはり、気付いたのか、そう言い切って、部屋の扉を躊躇無しに入って来る。
「あ」
「おっはよう!」
おばさんが何も知らない笑顔で従姉に手を振る。
彼女の顔は笑顔で引きつっている。目線で俺に釈明を求めたが、俺は視線を泳がせ、幼なじみの従姉から目線を逸らす。
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