雨の運び屋

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   ある真夏日の帰り道。入道雲が大きく広がる夕暮れ時は、雲が城を造るかのように佇んでいて、真っ赤な光が世界をオレンジ色に染め上げていた。  俺は走る。背中の後ろに可愛いお嬢さんを乗せ、ちゃりんこのペダルをガタガタと必死にこぐ。夕日の沈む静かな街並みを眺めながら。 「あ、あの!」 「どうかしました?」  栗色のふわっとした長髪が風に靡く、女子学生の制服に身を包んだお姫様が声を発した。  走行中に寄りかかる背中側の白いYシャツは黄昏色に染まっていた。  彼女は俺の先輩なのだが。 「あの、どこがゆったりで、静かなのでしょうか!?」 「そりゃ~、うん。気分ですよ、気分!」 「そこの自転車、止まりなさい!」 「怒られて、しかも追われてるじゃありませんか!?」 「あははは」 「笑いごとじゃありません!!」  只今、全力疾走で、俺はお巡りさんから逃走中である。  彼らの巡回中に、俺たちは二人乗りを注意されたのだが、無視したら怒って追いかけられてしまっている。  相手も自転車だ。そう簡単には逃げられない。 「ど、どうするんですか?」 「こんな事もあろうかと、ちゃんとご用意してますよ」 「……?」  俺は前籠にいれたバックからがさごそとある物を探り当て、それを後ろで不思議そうにしている彼女に渡す。  
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