雨の運び屋

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  「はい。これを後ろにばらまいてください」 「な!?」  意味が分かったのか、彼女は面を食らって驚く。 「こんな事したら!」 「捕まったら、受験どころじゃなくなりますよ?」 「そ、それは……!」  先輩は今年で受験生だった。俺はそれを盾に、彼女へ共犯を強要してのだ。 「悩んでいる時間はもうあまりありませんから。さあ、速く」 「わ、わかりました! もうどうなっても知りませんから!」  彼女は俺から受け取った物を撒き散らす。 「な、何なのだ!?」  パン、シュ。そのばらまかれた棘は、上手く警官の自転車をパンクさせた。 「これは、画鋲か! クソ!!」  がしゃん。後ろから何かが崩れる音がしたがあえて見ないことにした。  今だ。俺は今までより一層ペダルを動かす足に力を込めた。 「ま、これで一安心ですね」 「どこかですか!」  背中越しの猛抗議。少し自転車が揺らいだ。 「そう騒がないでください。危ないですから、ね?」 「そっちの方が、よほど危ないですよ!」  ぽかぽかと背中を叩かれる。あんまり痛くないのは彼女なりの優しさか。 「まあまあ、『終わりよければすべて良し』っていうじゃないですか」 「全然、良くないです!」  ギャーギャーと後ろ側から騒がれ、大事な荷物まで落としそうになった。  ぐらぐらと一直線に走れない。正直、今にも転びそうで怖い。 「きゃ!?」 「だから、暴れないでください。危ないですってば」 「誰の所為ですか!?」  俺の大切な荷物はちょっとおこりんぼさんだった。  
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