1・満月の夜の邂逅

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――いつになったら終わるのだろう。この身が、この焼けつく渇望は、果てるのだろう。 真夜中。寝静まった町をまるで幽霊さながらに、するすると滑るように歩きながら、緋羅は頭上に浮かぶ月を仰いだ。 雲一つない闇空に、淡く柔らかい銀白色の光を放つ満月。 幻想的ですらある風景だが、感傷に浸ってる場合じゃない。 頭を振り、ややつり目気味の瞳を動かし、辺りに意識を戻す。 『渇き』を満たす為に、『獲物』を見つけなくては。 闇に紛れる漆黒の艶髪を、微風が揺らす。 長身で体格の良い外見なのに、一挙一動は無駄がなく、しなやかで、猫のようだ。 緋羅は急に足を止める。 風に乗って聴こえてくる『音』に耳を澄ませた。 (近い。この感じは・・・ふん。女だな) 緋羅は歩調を速め、再び歩き出した。 常人では聞き取れない数キロ先の『音』の主の元へ。 喉の『渇き』はもう限界だった。 知らず歩幅は更に大きくなり、駆け足になる。 (今すぐ『血』を飲まなければ気が狂ってしまう) 渇いた焦燥感を抱き、角を曲がる。 前方を行く『獲物』を視界に捉え、人間の動きではありえない跳躍で女の前に降り立つ。 助走も、地を蹴る音も無かった為、女はビクッと震え、突如現れた男に驚き、目を見開いた。 女の様子に満足したように、不敵な笑みを浮かべた緋羅の口元からは、長い牙が覗き、月光を受けて煌めいた。 そう。緋羅は人間ではない。 人の生き血を糧に、闇に存在する『吸血鬼』であった。
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